仕事が終わり、家へと向かう。
本屋か。そういえば最近、あまりマンガを読んでいないな。
ちょいと寄ってみよう。そう思い、久しぶりにコミックコーナーへ。
浦沢直樹の焦らしマンガのひとつ「プルートウ」3巻と、星野之宣の
新作があったので買った。楽しみだ。

 マンションの正面玄関に鍵を差し込み、開ける。
郵便物のチェック。相変わらずチラシだらけだ。
幼稚園からの手紙もあった。

 お魚くわえたどら猫 追っかけて
エレベーターの呼び出しボタンを押す。
 はだしでかけてく 陽気なサザエさん
封筒を見つめながら口笛。
 みんなが笑ってる お日さまも笑ってる
何故か、「サザエさん」のテーマだ。
 ル~ルル ルルッル~
「こんにちは」

 ハッと手紙から目を離すと、マンションの住人が眼前の箱から
目を伏せがちに降りてきた。「あっ、こんにちは...」

 しまったぁ~!
キーも音量も高目だったぞ。

 「口笛を吹いていた兄ちゃん」ならまだマシだが、
「ノリノリでサザエさんのテーマを口笛で吹いていた変なひと」
と思われている可能性大...


 口笛さえ吹いていなければ...
こんなことがあってもめげるな、オレ。
しかし、家のドアをくぐって、カチャッと閉めるまでは公共スペース。
「ふっ」と気を抜かないようにしろ、オレ。

                    つづく